私の培ってきたホスピタリティをTRUNKで伝えていくにあたっては、「ホスピタリティ勉強会」と「技術向上勉強会」という、大きく2つの勉強会を開催し、TRUNKメンバー一人ひとりに、改めてホスピタリティについて考えることや、自らの行動を見つめ直す時間を設けています。

それぞれの潜在ホスピタリティを活かす「ホスピタリティ勉強会」。

「ホスピタリティ勉強会」では、「ホスピタリティ理解」「礼儀」「笑顔」「声の抑揚」「視野」「マインド」「予知能力」の7つの基盤となる要素を紐解きながら、メンバーそれぞれが潜在的にもつホスピタリティに気づき、顕在化するためのきっかけとなる場になればと考えています。そして勉強会を通じて、それぞれの違いを理解した上で、サービスをホスピタリティに変えていく後押しができればと思います。

考え方は様々ありますが、私はサービスとは、お客様を迎え入れるにあたり、事前準備をし、当然の対価として、提供されるべきものであると考えています。一方でホスピタリティとは、上記サービスに「目配り」「気配り」「心配り」とともに「思いやり」があるからこそ、お客様には“心の豊かさ”として付加価値を与えるものだと考えます。

お客様に心地よい時間を過ごしていただくには、さりげない思いやりが大切だと考えています。ホスピタリティ業界において、顧客満足の向上といった言葉をよく耳にしますが、お客様からの評価は後からついてくるものであり、顧客満足や評価を求めて行動してしまうと、どうしてもわざとらしさが出てしまい、心地よいおもてなしは、提供できないと思います。

また、教える立場になって思うことは、「顧客満足」を間違えて捉えている人が多いと感じています。実は、お客様を満足させるだけのホスピタリティは、本質的なホスピタリティとはいえません。満足の先にある「ドキドキ・ワクワク」といった感情や、「感謝・感動」を創り出すことこそがホスピタリティと言えるのではないでしょうか。

一方で、「技術向上勉強会」では、TRUNK(KITCHEN)やTRUNK(LOUNGE)など、館内のそれぞれのレストランやファシリティーズにおいての課題や、業務フローに沿って、具体的な改善・向上を目指した勉強会として行っています。同じホテルの中でも、各空間によって、お客様の期待はそれぞれです。空間ごとの特性に合わせたホスピタリティを考えて、業務に落とし込めるように行っています。

また2つの勉強会に加え、力を入れて行っていることが「店舗美化」の取り組みです。

サービススキルや、ホスピタリティについて、様々お話してきましたが、お客様が「素敵なお店!」と感じる1番の要因は、店舗デザインや料理、サービスのスキルでもなく、「店舗の清潔感」です。抜群に清潔感溢れるお店には、自然と料理やサービスにも、多くの期待を持ちます。また、美化に取り組んでいると、自分のお店に愛着も生まれます。お店に愛着をもつことは、ホスピタリティを発揮する上で、大変重要な要素のひとつだと捉えています。自分の働いている会社やお店のことが好き、そしてお店で働くことに誇りを持つということは、オーナーシップを持つということにも繋がります。一人ひとりがオーナーシップを持って働くことで、より高いホスピタリティの提供に繋がるのではないでしょうか。私自身もメンバーと共に、日々、時間が許す限り「愛着」づくりに励んでいます。

「個性を無くさないホスピタリティ」の育成。

TRUNKでホスピタリティ勉強会を始めさせていただいてから、半年ほどになりますが、ホスピタリティ勉強会を受けてからの各メンバーの接客に向かう顔つきの変化や、改善に向かって努力する姿を垣間見ると、やはり嬉しく思います。初めは、お客様と上手くコミュニケーションを取れなかったメンバーが、一生懸命にお客様との距離感を縮めるべく努力している姿は、とても感慨深い気持ちになります。

TRUNKでホスピタリティを教える上で、心掛けていることがあります。それは、数時間の勉強会をして終わりではなく、その後のメンバーの取り組みを私自身が「よく観察」し、「よく考察」、「よく洞察」するということです。やはり、言葉で伝えるだけでは、表面的な言葉の理解で終わってしまうと考えています。客観的に現場で行われていることを見て、物事を明らかにするために考え、本質を見抜くということが重要であると常に思っています。

また、「個性を無くさないホスピタリティ」の育成ということを大事にしています。 TRUNKでは、「マニュアルで縛らない」人事戦略をとっています。働くメンバーの主体的な行動や自由なアイディアが、TRUNKらしさを作り上げています。接客をする上でも、マニュアルに縛られることなく、メンバーそれぞれの個性を活かした人間味溢れるホスピタリティを発揮してほしいと思います。

立つだけではなく、背伸びするだけでもなく、ジャンプしないといけない。それがTRUNKでの仕事。

今まで、ホスピタリティ業界で、たくさんの経験を積んできましたが、TRUNKでの仕事は、私にとって全く別のフィールドだと感じています。今までの経験は、どちらかというと、いかに自身のサービスマンとしての「個」のスキルを磨いていくか、というインプットする仕事が主でした。しかし、TRUNKでは、その私がインプットしてきた経験をいかに組織として、チームのものにしていくかというアウトプットを求められています。

またTRUNKでは、その仕事を継続させる「仕組み化」「体系化」を強く求められています。ホスピタリティは、無形ですので、なかなか人に伝えることや仕組化することが難しい分野であると思います。そのホスピタリティをいかに有形に変えつつ、組織として継続させる仕組みを構築するかということが、自分に課されている難しいミッションであり、それ故に挑戦する楽しさがあります。

また組織として、ホスピタリティを浸透させていくには、私一人の力では、到底達成できるものではありません。精一杯、自分自身もジャンプして、様々なメンバーと携わり、そして巻き込み進めていきます。そのためには、自部署の仕事だけに留まらず、範囲を決めず、自ら行動し仕事を探す。つまり自らの仕事に対して、立っているだけではなく、背伸びするだけでもなく、ジャンプしていかないといけない。それがTRUNKでの仕事への向き合い方だと実感しています。

初めの頃は、今までの経験とのギャップに戸惑いもありましたが、慣れてくると個性豊かなメンバーのもつ、意外性のある意見が心地よく感じてきました。そうした意味でも、TRUNKは、私にとって大変ユニークでやりがいのある会社だと感じています。

TRUNKのホスピタリティを通して、「豊かさ」を世の中に発信していきたい。

昨今、メディアを通して発信される情報の多くに、デジタルが絡むと感じています。withコロナの世の中になり、より一層、ホテルやサービス業界においても「非接触」や「オート・・」のようなトピックスを多く拝見するようになったと思います。そんな中で、人々が忘れつつある「人間の中にある本来の心の豊かさ」である、あたたかさや優しさ、笑顔など、ほっとするひと時が改めて見直される時期だと、私は考えています。このような時だからこそ、TRUNKならではの自由なホスピタリティこそが、人の寂しさや不安など、歪んだ心を滋養させるのではないかと思います。ホテルへお越しいただく際には、五感でホスピタリティを感じて欲しいなと思います。目に入るもの、手に触れるもの、メンバーとのちょっとした会話や談笑の中での発見などを通して、「豊かさ」を感じていただけるのではないでしょうか。

また近年では、ヨーロッパ、主にフランスのホスピタリティが美しいと言われていた時代から、日本のホスピタリティのきめ細かさなどが世界から注目を集めています。

今後は、世界各国からTRUNKで提供している唯一無二のホスピタリティを求めて旅人が訪れるように、そして、我が家に帰ってきたような安堵感でいっぱいになる。そんな“和み”のひと時を提供する場としてTRUNKをより多くの人に発信していきたいです。その頃にはきっと、東京でもTRUNKの提供するホスピタリティがベースとなり、東京を盛り上げ、東京そして日本がホスピタリティ王国になること信じています。私は、TRUNKを通して「ホスピタリティとは」を発信し続けることが、自分自身の使命であると考えています。

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