ホスピタリティ業界にイノベーションを。というミッションを掲げ、ブティックホテルを起点に新たなラグジュアリーを提案するTRUNK(HOTEL)。TRUNKが目指す未来に向かうには、「個」と「組織」の力の最大化が不可欠です。株式会社TRUNK専務取締役であり、人材開発部部長である市川裕秀が、根幹となる人事戦略のいまを語ります。

ホスピタリティ業界にイノベーションを起こすために。

TRUNKの今後の計画と、現在注力していることについて教えてください。

神宮前のTRUNK(HOTEL)1号店のオープンから10年を目安に、東京都内を中心に複数店舗の出店を予定しています。私たちがターゲットとしているのは、ライフスタイル感度の高い富裕層。旅も遊びも、さまざまな経験をしてきた感度の高い方たちです。

世の中では、価値観の多様化に伴い、ラグジュアリーの定義も変化してきていると感じています。ですが、その変化に即したサービス、もっと言えば、その変化を捉えながらもお客様の期待を超えるサービスを提供できているホテルは、日本にはまだ存在していないと捉えています。

私たちは、今の時代に求められる新しいラグジュアリーを追求しながら、私たちが捉える’東京らしさ’をTRUNKらしい独自の表現でアウトプットし続けることで、日本の観光産業を盛り立てる起爆剤のような存在にりたいと考えています。

TRUNKがそのようなイノベーティブな存在になるためには、お客様に向き合うメンバー一人ひとりが、自ら考える力を高め、自発的に行動できるようになること。そして、メンバー一人ひとりが尊重され、それぞれがやりがいを持って働けている実感や、もっとこうしたいというWANTを多く持ち続けられていることが必要であり重要だと考えています。

今年においては、ホテルを一時休館するなどコロナの影響で想定外の事柄が続きましたが、私たちはこれをチャンスと捉え、組織開発に力を注ぐ時期と決め、さまざまな取り組みを行っています。

組織開発においては、主にこの3つに注力をしています。

1. 理念浸透と体現による組織文化の醸成
2. TRUNKらしい人事制度の確立
3. TRUNK STANDARDを軸とした新たなホスピタリティ力の構築

TRUNKらしい文化は、メンバーの能動的な行動から創られる。

理念浸透と組織文化の醸成に対する取り組みでは、どのようなことをされていますか?

ホテル休業中、リモートワークが中心だった時期には、理念理解を促進するオンライン講座をメンバー全員が参加で開催しました。それ以外にも、理念の理解度を高めることを目的に、部署内に留まらず、部署を超えてオンラインミーティングを自主的に実施していた場面も多く見受けられました。

正直、理念というものが表層の理解に留まっていたであろうメンバーもいた中で、これらの取り組みを行ったことは、彼らにとって改めて深く考える機会となり、体現できるまでの理解促進が実現できたと感じています。そして、自部署以外との接点を持てたことで、相互理解を深める機会にもなっていたと思います。

また休業期間中には、さまざまな部署やレイヤーで構成された社員主導のプロジェクトチーム(公式理念サポーター)が発足しました。現在、理念理解を促進するためのワークセッションの企画実施や参考書籍の配信など、彼らが能動的にやってくれています。

ワークセッションでは、会社からのトップダウンではなくプロジェクトメンバーによる企画推進という点で、気構えすることなく参画できるからなのか、楽しそうに参加しているシーンが多く見受けられました。きっと、このプロジェクトがあることで、若干堅さを感じる“理念”というものが、メンバーにとってより手に取りやすい、身近なものに感じ取ってもらえているのではないでしょうか(笑)

それから、理念の見直しも行いました。これまで、TRUNKではACTIONとして「オーナーシップ」「クリエイティビティ」を掲げていましたが、より分かりやすく、個々人がより行動に繋げやすくするために、CREDO(個として大切にしている思考や行動)を策定しました。現状、まずは評価者であるマネジメントメンバーから、CREDOの理解を深めるためのセッションを定期的に開催しています。来期に向けて、メンバー全員が理解し体現していけるように、丁寧にコミュニケーションを取りながら、TRUNKらしい文化の醸成に向かって取り組んでいきたいと思っています。

全員で未来の仲間を探す「FIND TRUNKERS」。

TRUNKらしい人事制度として新たに導入したもの、また、近々導入を予定しているものはありますか?

まずは、FIND TRUNKERS。こちらは、今年の8月からスタートさせた取り組みです。
一般的に、求人媒体や人材紹介会社経由での採用がほとんどだと思いますが、入社後のミスマッチを回避し、TRUNKで本当に熱狂できる人材を集めることができる方法がもっと他にあるのではと考え、この仕組みを導入しました。

もともと、TRUNKには「知人紹介制度」として、新たな人材の紹介者に対し一定額の謝礼を支給するという仕組みがあり、2019年度の実績としては、入社者の30%がTRUNKメンバーからの紹介経由でした。実際、TRUNKの社風を深く理解しているメンバーからの紹介ということで、新たな環境に対する適応スピードやTRUNKの取り組みへの理解は早く、入社間もないメンバーでも社風にフィットして即戦力として活躍してくれていますし、採用コストが軽減できるというメリットもありました。

この結果を踏まえ、さらにその動きを加速させようと、2020年度からはその仕組みをさらに強化しています。同一メンバーからの複数紹介も想定し、人数に応じて増額される謝礼を盛り込んだ仕組みに更新したり、全員がリクルーターという位置付けで、「採用担当」と記載された名刺を持ち、全員で一緒に働く仲間の採用に取り組んでいます。

逆指名ありの「ドラフト会議」。

さらに、10月からはドラフト会議を導入しました。
自身のキャリアや成長機会を目的に「自己異動申告制度」を実施している企業は多くあると思いますが、TRUNKにおいても、それを参考とした制度を導入しました。

この制度では、個人から異動申告をするだけではなく、部署長からのスカウティング機能も組み込んでいます。申請後には、アプローチ期間というものを設け、異動申告者と部署長とが意見を交わし、お互いの思いやニーズを確認し合った上で、最終的に全部署長が集まるドラフト会議で異動のジャッジをするという流れで進んでいきます。

TRUNKでは、メンバーそれぞれのやりたいこと(WANT)を醸成し、それを体現していく組織風土づくりを目指しています。誰でもフラットに、会社に対して自分が行きたい部署ややりたい仕事を発信できる機会を提供することで、より個人も組織も生産的に機能し成長していけるのではないかと、この制度の成果に期待しています。

多種多様な仲間が持つ経験を還元し合う「学び場」。

そして、これから導入を検討しているのがTRUNK学び場です。
TRUNKには多種多様な人材が集まってきていている会社です。業務に必要な専門スキル以外にも、遊びやカルチャー領域での特技や面白いスキルを持っているメンバーがたくさんいることから、そのスキルをもっと活かすことで、組織の成長や個々のモチベーション向上に繋げることができるのではないかと考えました。

この制度は、メンバーが講師となって、自分が得意なスキルを他のメンバーにシェアするものです。まず、講師になるには、「こんな講座ができるよ」「こんなことが教えられるよ」と自ら手を上げてもらいます。企画設計〜集客〜実施までを講師自身が行います。講座の開講時間や参加者からの評価をもとに、それに見合うインセンティブが支払われるという仕組みです。

メンバーのWANTを体現できる機会としてだけでなく、社内副業として活用してもらうことも想定しています。今後の実施に向けて社内でヒアリングを行ったところ、講師として参画したい意向を持つメンバーは多く、PCスキル、語学、アクティビティ(ヨガ、トレーニング関連)、料理といった多様な講座が開設される予定です。

TRUNKの未来を創る、組織戦略のいま。【後編】につづく→

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