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2020.01.24

TRUNK(HOUSE)ができるまで Vol.4 森 祐輔&イ・ユンヒ&岡本 将士&三島 伴博

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まるでエアポケットのように、周囲の喧騒とは無縁の静かな街並みを残す神楽坂。
黒い板塀が迷路のように続く小径の中に、小さな案内に気づかなければ見落としてしまいそうなほど周囲に馴染んで、ひっそりとTRUNK(HOUSE)がある。だが一歩足を踏み入れると、紛れもない今の“東京”が展開されている。一言では言い表せない多様な価値観を内包する空間がいかにして生まれたのか。
今回は、TRUNK(HOUSE)の運営チームを紹介。プライベートバトラーとしてゲストをお迎えする、森祐輔とイ・ユンヒ。そして、食を通じてTRUNK流のおもてなしをする、シェフの岡本将士と三島伴博の4名に、TRUNK(HOUSE)においてのサービスで大切にしていることや、「TOKYO SALON」の実現にむけたアクションについて語ってもらった。

森:
以前は六本木のラグジュアリーホテルと表参道のレストランでサービスを行っていました。その後、知人の紹介でTRUNKにジョインしました。
今は、TRUNK(HOUSE)の運営全体を統括すると同時に、プライベートバトラーとして、ゲストへのサービスをおこなっています。

イ:
2015年にテイクアンドギヴ・ニーズ(以後 T&G)に入社しました。TRUNK立ち上げの時に、上司から「ここでマネージャーになるか、それともTRUNKで一から学びたいか」と、2つの道を提案いただいたんです。迷ったのですが、新たな経験を積むことを選びTRUNKに異動しました。TRUNK(HOTEL)宿泊部での経験を経て、TRUNK(HOUSE)では、森さんとともに、プライベートバトラーを担当しています。

岡本:
故郷の広島のレストランで経験を積んだのち、 T&Gに入社して運営する広島の結婚式場でシェフを務めました。
その後、TRUNK(KITCHEN)でシェフを担当したのち、神楽坂チームの一員となりました。今は、TRUNK(HOUSE)のヘッドシェフを担当しています。

三島:
中学卒業後、大工として働く中で、次の夢として芽生えたのがシェフでした。そこから幾つかのレストランで働き、もっと食について学びたいという衝動から、ワーキングホリデーという形で、フランスのパリの1つ星レストランでスーシェフを担当しました。
TRUNK(HOUSE)では、岡本さんとともに、シェフを担当しています。

森:
最初にここに訪れたのは、TRUNK(HOTEL)での仕事終り。夜に1人で見にいった時です。まだ施工前だったので中は入れなかったのですが、館の外観と神楽坂の街を一周して、この歴史あるエリアにTRUNKがホテルを出すことに、期待に溢れたことを覚えています。

出来上がったTRUNK(HOUSE)で、個人的に一番好きな場所は、1階の中庭です。
春には桜、秋には楓が咲き、日本の四季の流れを感じ取れる木々を用いて構成しています。あと、日中にはないのですが、夕方になると、木々の足元に水が流れはじめて夜には池になり、その水面に月明かりが映るんです。
朽ち果てていた庭を、ただ単純に綺麗にするだけではなく、神楽坂や日本の歴史に紐付づく、遊び心があるギミックをプラスさせるところは、TRUNKならではだと思います。

三島:
中庭の石材の一部に、江戸城で用いられた石を使用しているんですよね。つくばいの石(*1)には当時の築城に貢献した島津家の家紋(薩摩藩)の印が薄っすらですが見てとれるはずです。

*1
日本庭園の添景物のひとつで、石製の手水鉢(ちょうずばち)。茶室に入る前に手を清めるために生まれ、置かれた背の低い手水鉢に役石を置き、和のおもむきを加えたもの。

イ:
中庭に限らず、ゲストを楽しませるストーリー性が備わった遊び心のあるディテールが、ここには無数に存在します。

例えば、館内のトイレのBGMが、映画『トレインスポッティング』の挿入歌である、ブライアン・イーノの「Deep Blue Day」なのは、外国からのゲストがとても喜ばれますね。「粋だね〜」みたいな表情を浮かべてトイレから出てこられます(笑)

森:
トイレから戻った後、ゲスト同士で「あのシーンね!」と言いながら、映画の話題で盛り上がっていますね。

あと、我々バトラーの衣装も、TRUNKらしいこだわりがあります。
作務衣はYohji Yamamotoさん、サンダルはsuicokeさんに、TRUNK(HOUSE)オリジナルを製作いただきました。
ゲストからも、「クール!」とお褒め言葉をいただきます。

岡本:
喜ばれるポイントだと、お食事などで使用する器も大変興味をもたれます。
「これはなんて器だ?」「どこで買えるんだ?」って質問攻めされますね。

森:
そんな時、ゲストに時間の余裕がある場合には、一緒に近所を散歩して陶器屋を見て回るんです。カフェ&ギャラリーの帝さんなど、神楽坂には素敵な陶器屋が多くあるので。

通常のホテルのサービスでは、”陶器屋の場所を紹介する” だけでコミュニケーションは終わります。でも我々は、そこで終わりにはぜず、少しでもゲストと同じ時間を過ごして、楽しんでもらうことに重きを置いてアクションをとっています。マニュアルがないからこそ可能な、TRUNKらしい突っ込んだサービスだと思います。

岡本:
器選びは、アトリエチームと一緒に進めていきました。京都まで買い付けに出向くこともありましたし、それこそ、帝さんでもいくつか購入させていただきました。TRUNKらしさの表現のひとつとして、あまり古いものばかり偏らず、現代の若い作家さんの作品も混ぜてセレクトしています。

三島:
食に関しても、オープン前の期間、何度も試行錯誤を繰り返しました。
日本の文化を感じ取れる食材を使ってTRUNKらしいアレンジを加えてお出ししたいと思っていました。野尻社長はじめ、プロジェクトチームに試食を繰り返してもらい、一品一品の精度を高めていきました。

岡本:
今でも常に新メニューは考えています。これは、プライベートシェフとして、ゲストの様々な要望全てに応えられるよう「引き出し」を増やすため。
時間さえあれば、旬な食材やインスピレーションの種を求め、三島さんと2人で築地などに出向いています。あとは、三島さんが農家の方と繋がりが強いので、そこからの情報収集は怠らず行っていますね。

三島:
昨年の夏に、新たな野菜を求めて、生産者巡りに行きました。
以前から気になっていた、能登半島で有機野菜を生産する高農園さんに出向き、「野菜をつかわせてほしい」と直接交渉しました。
能登島特有の赤土を何度も掘り起こし土壌をいちから整え、自然農法で手塩をかけて育てられた高農園さんの野菜は格別に美味しく、多くの料理人から支持されています。
熱意を伝え共感していただき、今では、高農園さんの野菜をコース内で使わせてもらっています。

森:
キッチンとダイニングが一体化したレイアウトも、サービスの質と幅が広がるポイントのひとつです。ゲストと距離が近く、ゲストの表情ひとつ取ってもすぐに動向が拾える。その「気づき」をすぐチームに共有して、各々が思うサービスを提供する。全員でテンポよくサービスにアレンジを加えることができます。

イ:
常にゲストの側にいることができる。なので、ゲストも気になったことをすぐ質問してくれるので、おのずと会話は弾みますよね。ともに食事を楽しんでいる感覚です。

朝、ゲストが2階のベットルームで目覚めると、1階のキッチンから朝食の仕込みをしている音が聞こえる。階段を降りると食欲を掻き立てるいい匂いがする。
日本的な表現かもしれませんが、もう実家ですよね(笑)
音や香りで日本の情緒を感じ取れるのも、TRUNK(HOUSE)の魅力です。

イ:
通常のホテルだと「シェフは食事を作る、サービスはバトラーの役目」みたいに縦の役割が決まっていると思いますが、ここは違います。領域関係なく、シェフの2人もサービスを常に考えてくれていることで、バトラーとしても助かりますし、何より、サービスの質の向上に繋がります。

岡本:
この前も、2名でお越しになったゲストの方に、ディナーの後「一緒に飲もうよ」と誘っていただいたんです。そこから3時間、6人でお酒を飲んでカラオケもして大盛り上がりをしました。
一緒に遊ぶなんて通常じゃ考えられないですよね(笑)
そういった固定概念に縛られないアクションが自然とできるのがここの強み。「バトラーだから」とか「シェフだから」とか関係なく、ゲストが最大限に楽しんでもらうためには何をすべきか、TRUNK(HOUSE)の運営に関わる全員で考えることが、私たちの共通認識です。

イ:
森さんとともに茶道を学んだことも、その考えを実際のサービスに落とし込むための一環でした。
オープン前の神楽坂プロジェクトミーティングで、TRUNK(HOUSE)のバトラー像とは何かを、チーム皆で協議を繰り返しました。その中で、結論に至ったのは「一人ひとりが個性を磨き、唯一無二なスキルをもつ」こと。
例えば、手品でも歌でも、ゲストを楽しませることができるなら、ひとつでも多くのスキルを身につけたかった。茶道宗和流十八代の宇田川宗光氏に稽古をつけていただきました。今では、ウェルカムドリンクとして、お茶をたてています。

森:
今は、生け花を学んでいます。もちろん、直接的にTRUNK(HOUSE)でサービスには繋がらないかもしれません。でも、生け花を学ぶことによって、季節の花や、種類にも詳しくなる。間接的にゲストとのトークにつながるし、将来、茶道のように、画期的な企画が生まれるかもしれません。
教育研修費の支援制度など、個々のスキルを磨くことを組織として推進しているTRUNKにいる以上、意識を高くし日々自己研鑽に取り組んでいます。

森:
チーム皆でよく話し合うんです。TRUNK(HOUSE)が目指している「TOKYO SALON」ってなんなんだろうねって。今のところ、まだ明確な答えはでていないんです。
もちろん「サロン」という意味や歴史背景は把握しているのですが、そこからTRUNKが作り上げようとしている現代版サロンとは何なのか。その答えを自問自答しながら運営している感覚です。

岡本:
森さんの言う通り、我々は、「TOKYO SALON」とは何かを探しながら、日々運営していくことが大事だと思っています。ゲストからの様々な要望に120%で応えて、そのサービスを気に入ってファンになってくれた方が、TRUNK(HOUSE)に再び帰ってきてくれる。その人たちがこの場所をきっかけに紐付いて大きくなり、新たなコミュニティーが形成される。
そこから何かの文化が生まれた時、いつしかTRUNKが目指す「サロン」と呼ばれるものになると思っています。

イ:
先日、ゲストがお夜食で「カップ焼きそばを食べたい」とご要望いただいたので、買いに行ったんです。焼きそばを作っていると、「さっきディナーで出たトリュフまだある?上に掛けてほしい」とおっしゃったんです。一口いただいたのですが、それがすごく美味しくて(笑)
そうしたら、ゲスト同士の会話で「この焼きそばの会社に連絡して商品化してもらおう」って盛り上がったんです。ジョーク半分かもしれませんが、これが万が一に実現したら、その商品の生まれた場所はTRUNK(HOUSE)ですよね。

TRUNK(HOUSE)を起点に革新的な商品が生まれる。それもひとつの「サロン」なのかなと思います。

森:
「文化を生む」って聞くと、大それたイメージなのですが、焼きそばの一例のように、どんな些細なことでもよいと思っています。
我々ができることは、その「カップ焼きそばを買ってくる」や「トリュフをかけてみる」のように、マニュアルや既成概念に縛られることなく、振り切ったサービスを継続する。
その先に、我々が追い求めている「TOKYO SALON」が、見えてくると思っています。

岡本:
今度、ぜひTRUNK(HOUSE)に遊びに来てください。
我々の振り切り具合、すごいですよ(笑)

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