192年から1832年までの長きにわたり、現在のベトナムの地で繁栄したチャンパ王国。その古都・ホイアンは16世紀から17世紀にかけて東西交易の中継地として、ポルトガルやオランダ、中国の貿易船、日本からの朱印船が来航する東南アジア屈指の貿易港として活況を呈しました。今も残る日本人町や中国人町は、多国籍な空気を湛えた当時の様子を静かに伝えています。
今回訪れたNamia River Retreatは、そのホイアンからほど近いトゥボン川に浮かぶ小さな島に誕生した新しいウェルネスリゾートホテルです。開業は2024年12月。私が訪問した時は開業から3ヶ月ほどしか経っておらず、敷地内ではまだランドスケープの工事が進められていました。
ホテル名に付けられた「Retreat(リトリート)」は「避難」や「隠れ家」を意味する言葉。最近では「日常の喧騒から離れ、自然に囲まれた静かな環境で心と体をゆっくりと癒し、自分自身と向き合う穏やかな時間を過ごす」という文脈で使われているので耳にしたことがある方も多いでしょう。
Retreatをその名に冠するとおり、このホテルのセールスポイントは「自然に寄り添った特別な田園体験」。Namia River Retreatでは、古い集落や漁村の伝統的な生活、トゥボン川の自然環境への敬意が感じられます。この敷地は元々マングローブが群生する湿地帯で、生態系や植生を守るために大規模な護岸工事を避けるなど、環境負荷の小さい建築手法が採用されおり、「創られた自然」ではないことが伝わってきます。
60ある客室はすべてヴィラ形式。トゥボン川の流れに沿って絶妙にレイアウトされています。建物自体を高床式にしつつ木質構造を取り入れることで、自然環境を残した上で洪水や潮位の変化にも対応するサステナブルな作りとなっています。ヴィラ一棟はそこまで広いわけではありませんが、すべてにプライベートプールが備わり、自然素材を生かした家具やゲストルームと屋外デッキに連続性を持たせたでデザインが目に止まります。シャワー&トイレやバスの配置には思わず「上手い!」と唸ってしまいました。
ドライサウナの窓の外にはトゥボン川の静かな景色が広がり、スパにはハマム(トルコ式のハーバルスチームバス)もあります。また、河岸エリアは植物が生い繁るジャングルのようなアレンジが加えられ、パドルボートでの近隣の小島巡り、川面に沈む夕陽や旧市街地の灯りが美しいサンセットクルーズ、ニッパヤシの林や地元の漁村の暮らしを眺められるボートトリップなど、この土地の伝統的や風景や文化に触れられるローカル色豊かなアクティビティが充実しています。
ホテルのオペレーター(ホテルオーナーから委託されて運営を担当する企業)に入るのは、ベトナムを中心に展開するウェルネス専門ブランドであるLumina Wellbeing。伝統医療、ハーバルレメディ、瞑想、ヨガ、呼吸法などを組み合わせ、滞在型ウェルネス体験を総合的にデザインするのが得意なブランドです。Namia River Retreatでも、食事、スパトリートメント、各種アクティビティに至るまで、Lumina Wellbeingの哲学が映し出されたウェルネスジャーニーを堪能できます。
レストランは2つ。メインダイニングである「The Merchant」は、ベトナム料理を現代的に解釈したコースやアラカルトが人気で、伝統と革新が融合した食体験が魅力です。「The Fisherman」はもう少しカジュアルな雰囲気で、こちらは新鮮な魚介類と地元の野菜や果物を活かしたヴィーガンレストラン。いずれのレストランも、Namia River Retreatの根底に流れるウェルネスの価値観が行き届いた食空間になっていました。
Namia River Retreatを存分に愉しめるのは、日常から離れた静かな環境で心身共にリフレッシュしたい大人たちかもしれません。お子様はもう少し大きくなってから、ですね。
SAME AREA
JOURNAL TOP









