
「TRUNKらしさ」をかたちづくるのは、多彩な個性を持ったメンバーの存在です。TRUNKで自分らしく働くことができるのはなぜなのか。一人ひとりの「いま」にスポットを当て、その想いを掘り下げます。今回話を聞かせてくれたのは、施設管理部で施設全般の維持・管理から、イベントの施工などに従事する米澤奏(よねざわ・かなで)。新卒1年目ながら、その年、最もTRUNKらしさを体現したメンバーたちに与えられるMBP(Most Branding Person)を受賞した、若手メンバーも活躍するTRUNKのなかでも注目を集める一人です。ホテルの運営を陰で支える黒子的業務を担いつつ、TRUNKの魅力をさらに高める新たな提案の機会を常に伺っているその姿勢は、他部署からも確かな評価を得ています。「自分らしく、泥臭く、人を支えていきたい」と語る彼。その未来は、一体どんな色で塗られていくのでしょうか。
美容師 or TRUNK。
その決断が人生を変えた。
包み隠さずにお話しすると、元々はホテル業界に強い関心を持っていたわけじゃなかったんです。TRUNKとの出会いも、言ってみればまったくの偶然でした。ある就職活動イベントに参加した際、そこで行われたワークショップでの様子を見てくれていたTRUNKの人材採用担当の方が面接を受けるよう声がけしてくれたのがきっかけでした。
選考が進み、TRUNKという会社のこと深く知っていくにつれて、「ここは他の企業、他のホテルとは何かが違うな」という感覚が芽生え始め、徐々に興味が高まっていきました。一番驚いたのは服装や髪型に関する規定が一切ないこと。働く人を型にはめない、一人ひとりの個性を大切にしている会社だという印象を強く持ち、「ここでなら自分らしさを大切にしながら働くことができそうだな」と感じました。大学で森林環境や森林資源に関する課題解決と持続可能な社会のあり方を学んでいたこともあり、TRUNKが掲げるソーシャライジングという考え方にも心を惹かれました。
就職活動をしていた当時は卒業後の進路に迷いもありました。その時に大事にしたのが「自分はどこで、どんな人たちと一緒に仕事をしたいのか」ということ。その観点で見たとき、素直に「TRUNKで働きたい」と思ったんですよね。もしTRUNKに採用されていなかったら、ですか? おそらく今頃は地元・徳島に戻って、親が経営する美容室を継いでいたと思います。美容師という仕事にも憧れがありましたから。TRUNKと出会い、TRUNKで働くと決断したことは、僕の人生にとっての重要な岐路だったと感じています。

TRUNKの世界観をつくる。
その自負を胸に現場に立つ。
所属先は、建物や設備の保守・点検、修繕作業、塗装、空調管理などを行う施設管理部。主に館内や館外の補修・塗装業務を担当しています。チームは現在7人と少数精鋭で、誰もがプロフェッショナルの集団です。関係する各部署と調整し、客室やバンケット、レストランなどが空いている時間を見計らって作業に入りますが、限られた人数でTRUNK(HOTEL) CAT STREET、TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK、TRUNK(HOUSE)の3つの施設をメンテナンスしているのでかなり忙しく、毎日が充実しています。
入社2年目の現在は、塗装や補修の仕事が中心です。補修や塗装の対象は、壁面、天井、什器、建具など多岐に渡り、TRUNKが大切にするグッドテイストな美しさを演出できるよう、日々の業務に取り組んでいます。担当する仕事は大小さまざまで、ペンで対応できるような小規模な補修から、劣化したエリアの全面的な塗り替えや質感や色味の調整といった比較的大きなものまであり、ホテルが作り上げてきた世界観やデザインを壊さないよう丁寧に仕上げることを常に心がけています。塗装だけでなく、施設内の家具や各種設備の点検業務や軽微な修繕対応などに関わらせてもらうこともありますね。
塗装は一見、地味な仕事に思われがちですが、TRUNKのように空間のデザイン性や世界観を大切にしている施設では、絶対に欠くことのできない重要な業務です。質の高い空間では、ほんのわずかな色味や質感の違いが空間全体に影響を与え、ひいてはホテル体験の質そのものを大きく左右する可能性もあります。TRUNKは素材や風合いにも細心の注意を払っているので、補修や塗装の際も単純に直せばいいのではなく、「元々そのようであったかのように見えるレベルでの仕上げ」を目指し、色の選定、塗り方、仕上がりの質感にまでこだわり抜くという意識で臨んでいます。
ホテルも開業から年月を経ることで、ベストな空間のあり方も少しずつ変化してきます。「開業当時はこの色がふさわしかったけれど、今は別の色にした方がより魅力的な空間になる」と思ったら、塗装色の変更を提案することもあります。単純な原状回復に留まらないところがこの仕事の面白みでもあります。TRUNK(HOTEL) CAT STREETは開業から数年が経ち、当時の塗装色が分からないこともあるため、今後のメンテナンスで困ることがないよう、塗料の品番管理なども積極的に進めています。
誰に言われるわけでもありませんが、入社以来、一貫してこだわってきたのは「目に見えない部分にまで気を配り、自分が持つ知識と技術を注ぎ込んで極限まで丁寧に仕上げる」ということ。細部の違いが必ずや空間全体のクオリティに影響を与える。その自負を持って仕事に臨んでいます。ゲストから感謝の言葉をいただくことはそれほど多くはない職種ではありますが、「自分の仕事が空間のクオリティを高め、ホテル全体の価値を支えている」と実感できることが、僕の原動力になっています。

誰かを支える仕事で、
自分を生かしたい。
施設管理の仕事は自分で希望しました。配属にあたっては、客室などを整えるハウスキーピングを第1希望に、施設管理を第2希望に挙げました。どちらもホテルの仕事のなかでは黒子的な存在です。ホテルでの仕事と聞くと、フロントやドアマン、バンケットやレストランでのサービススタッフなど、お客様と関わる華やかな職種をイメージすることが多いと思いますが、入社後の人材開発研修を経て感じたのが「自分には日の当たる花形職種よりも、泥臭く陰で人を支える仕事の方が向いている。その方が自分らしく働ける」ということでした。思い返せば、学生時代の部活動でもリーダーを支えるポジションを担うことが多く、それが自分の性格に合っていたのだと思います。
ホテルというのは、働く人たちの総合力が問われる業態です。さまざまな個性が集まり、それぞれに合った仕事を通じて貢献することでホテルの魅力が高まっていきます。どんな人でも必ず輝ける場所があるのは、ホテルという場所が持つ懐の深さだと思います。
今後は塗装に加えて植栽のメンテナンスにも携わっていく予定で、先輩や外部パートナーの方たちから植栽管理の基礎を教えていただく毎日です。電気管理に関しても、第二種電気工事士の資格取得に向けて勉強しているところです。電気周りの対応は外部パートナーに依頼することが多いのですが、資格を取得して作業を内製化すれば、緊急性の高い場面や時間との戦いになるような時でも迅速に対応できますよね。時間が許す限り、業務を委託している職人の方の仕事を傍で見せていただき勉強しています。実際のケースを題材に教えていただけるので、座学だけではわからない実践的な知識と技術を身につけられると感じています。プロの仕事を間近で学べる環境は本当にありがたいことです。

初めからそうであったように。
空間に自然に溶け込む仕事を追求する。
入社から1年が経ちましたが、一つひとつの仕事と丁寧に向き合う姿勢を大切にしながら、日々の課題に取り組むことができています。塗装に限らず、施設管理の仕事で大切なのは、「決して悪目立ちすることなく、ホテル空間として違和感を感じさせないこと」だと思っています。「ここを塗装し直したんだな」「あそこを修復したんだな」ということがわかってしまってはプロの仕事とは言えません。まるでずっと以前からその状態であったかのように感じられなければいけないんです。
印象に残っている仕事があります。TRUNK(HOTEL) CAT STREETのメインダイニングであるTRUNK(KITCHEN)。そのテラス部分に目隠しを兼ねたエキスパンドメタル(金属板を特殊な機械で千鳥状に切れ目を入れて押し広げ、菱形や亀甲形の網目状に加工した製品)の造作を設置したときのことです。TRUNK(HOTEL)の空間は細部まで世界観が統一されているため、施工の際もその雰囲気を損なうことなく、いかに自然なかたちで空間に溶け込ませられるかが課題でした。初めて担当した大きな施工でしたが、仕上げの納まりやバランスを自分なりに工夫しました。細かな修正を重ねて完成させたときの達成感は今も忘れられません。「自分の手でこの空間をつくった」という実感と、それがホテルの一部として活かされていく感覚がとても嬉しかったことを覚えています。
実はこのインタビューを受けているとき、「あの造作って新しく作ったものだったの? 全然わからなかった」という声をいただいたんです。裏を返せば、ホテルのことを知り尽くしている方でも気がつかないほど、違和感なく空間に馴染んでいたということですよね。これって最高の褒め言葉だと思いませんか?

人と人との距離が近いこと。
それがTRUNKの魅力。
TRUNKの魅力は、何と言っても「人と人との距離がとても近いこと」。30名以上いる同期入社組とも本当に仲が良いですね。TRUNKに集まっているのは例外なく個性的な人たち。それぞれが自分らしさを表現しながら働いているので、その人を理解するまでが早いことも距離を縮めやすい要因かもしれません。
施設管理という裏方の立場でも、他部署のスタッフと日常的に気軽にコミュニケーションを取れる環境があるので、日々の業務をスムーズに進めることができています。部署、職種、年齢、経験の違いを感じることは全くありません。関係部署のメンバーたちとすぐに話し合える関係性が築けているので、現場での対応中に調整作業が必要になったときでも臨機応変に対応できています。立場を越えてごく自然に協力できる雰囲気が生まれる背景には、やはり「魅力的なホテル空間をつくろう」という共通の思いがあるからだと思います。上司との関係性も本当にフラットです。日々の業務で生まれる疑問も気兼ねなく相談できますし、「まずはやってみよう」という姿勢を大事にしてくれるので、「自分で考えて、提案して、動く」という心理的ハードルも低いですね。
僕は入社直後の研修やジョブローテーションの期間中も、多くのメンバーたちと交流することを心がけていました。その後も、他部署のメンバーたちと知り合い、自分のこともより深く知ってもらうために、社内交流の機会やワークショップなどにも積極的に参加しています。TRUNKには、その年、最もTRUNKらしさを体現したメンバーたちに与えられる「MBP(Most Branding Person)」という賞があります。昨年、僕もその一人に選んでいただきました。新卒1年目としては初めてと聞いています。栄誉ある賞をいただけたのは、日頃からメンバーたちとの交流を大切にし、僕自身や僕の仕事を知ってもらうことで、「何かあったら奏に相談しよう」と思ってもらえたことが大きかったのかなと思っています。 休日でもTRUNK(HOTEL) CAT STREETのTRUNK(KUSHI)やTRUNK(KITCHEN)、TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARKの PIZZERIA e TRATTORIA L’OMBELICOに食事に行くほどに、僕はTRUNKという場所が好きなんです。空間やサービスのクオリティに決して妥協せず、それでいてスタッフ同士の関係性は温かい。そういったバランスが取れているところがTRUNKの魅力だと感じています。

自分自身の興味関心を仕事につなげる。
それが今の僕のWANT。
施設管理の仕事をしていると、社内のさまざまな部署と関わりを持ちます。例えば、TRUNK(HOTEL) CAT STREETのTRUNK(LOUNGE)でのアートワーク展示もそのひとつ。2025年3月には、ウッドアーティストの高橋成樹さんの作品展示とTRUNK(LOUNGE)内のポップアップスペース「Room101」でのアートイベントに携わらせていただきました。自然の木々や山々に囲まれて育った高橋さんは、19歳の頃より森林資源を利用しながら健全な森林を守り育てる「山師」として林業の世界に入り、22歳の時に独学でウッドプロダクトの制作を始められました。作品の素材には、先代から受け継いで自身が所有する山を健やかに保つために間伐した檜や杉などを使用されています。僕は大学時代、森林環境や森林資源に関する課題解決を学んでいたので、高橋さんのプログラムのお手伝いができたのは貴重な体験となりました。将来的には自分でも森林資源や環境保護と関係の深いアーティストを発掘し、ポップアップやラウンジアートを実現してみたいですね。それが今の僕の「WANT」です。
TRUNKはこれから海外展開も視野に入れていく可能性もあります。国が違えば施設管理のスタイルもきっと変わるはず。ぜひ僕も海外で仕事をしてみたいですね。施設管理の仕事はひとつとして同じものはありません。一つひとつの仕事に集中し、自分の技術と知識を高めていきたいと思っています。