オテル・デ・グラン・ブールヴァール(Hotel des Grands Boulevards / 現 Grands Boulevards Experimental)は大通りから奥まった場所に建ち、長い小径を抜けてやっと辿り着く「隠れ家」のようなホテルです。パリの文化的中心地にあるにも関わらず、喧騒から離れた落ち着いた時間が流れています。
ここはオペラ・ガルニエ、ルーヴル、マレ地区といったパリを代表する観光地も徒歩圏内という好立地。ミシュランホテルガイドでは「1 Michelin Key」を獲得していますが、カジュアルな服装でも気軽に過ごすことができる寛いだ雰囲気のあるブティックホテルです。私は開業翌年の2019年に息子と2人で宿泊しました。
このホテルのルーツは18世紀、フランス革命前夜にまで遡ります。当時、この場所は緑に覆われたプロムナードで、庭園を持つ邸宅として建設されました。以来、オフィスとして、また、ブルジョワ階級のアパートメントとして、さらには映画館としても使われるなどユニークな変遷を経て、2018年、歴史の深みとコンテンポラリーなデザインが調和したホテルとして再生されました。
客室は全50室。ホテルデザインを手掛けたのはドロテ・メイリシュゾン(Dorothée Meilichzon)。彼女は、建物が持つ歴史的背景を最大限に尊重しつつ、現代的なエレガンスを表現するスタイルで知られる人気デザイナーで、オテル・デ・グラン・ブールヴァールのデザインでもその才能が遺憾なく発揮されています。クラシックな四柱ベッド、赤大理石のアクセントなど、マリー・アントワネット(Marie Antoinette)やルイ16世(Louis XVI)の時代を彷彿とさせるロココ様式の宮廷文化的意匠と、田園風の素朴さが同居する独特の世界観を作り上げています。
1階のメインダイニングが、このホテルのシグニチャープレイスです。パリの空を取り込むガラス屋根の下には開放的な空間が広がり、奥まった場所にありながら採光性も十分です。料理を監修するのはジョバンニ・パッセリーニ(Giovanni Passerini)。フランスとイタリアの伝統を融合した、旬の素材を生かしたメニューが特徴です。古典的な味わいに現代的なアプローチを加えた独自のコースは、食文化の充実したパリでも高く評価されています。
このホテルにはバーが2軒あり、パリ市民からも人気です。「ザ・シェッド(The Shed)」はパリの街並みを一望できるルーフトップバー。パリの中心部にいながら静かな時間を堪能できます。もうひとつの「ザ・シェル(The Shell)」は、より親密で落ち着いた雰囲気のカクテルバー。深紅の壁と金色の貝殻をモチーフとした内装が特徴で、ロココ様式の代表的デザインであるロカイユ装飾を存分に取り入れています。心落ち着く空間に仕上げられており、一人でカクテルを楽しみたい夜にはぴったりです。
ホテル滞在中、息子が寝静まった後に、一人でルーフトップバーを訪れてリラックスした時間を過ごしました。しばらくして部屋に戻ってみるとびっくり!ドアの向こうで彼が大泣きしていたんです!私がいないことに気づいて不安になってしまったんですね。懐かしい思い出です。
そんな記憶もあって、今も印象に残るホテルのひとつとなっています。
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