
「TRUNKらしさ」をかたちづくるのは、多彩な個性を持ったメンバーの存在です。TRUNKで自分らしく働くことができるのはなぜなのか。一人ひとりの「いま」にスポットを当て、その想いを掘り下げます。話を聞いたのは、TRUNK(LOUNGE)のバーテンダーとして、国際色豊かなゲストをいつでも笑顔でもてなす姿が印象的なラム・ソム・ラジュ(Som Raj Lama)。異国の地で働くスタッフたちが抱える日々の悩みごとを相談できるコミュニティを率先して立ち上げるなど、外国籍スタッフのリーダーとして精神的な拠り所にもなっています。この取り組みが評価され、2024年には、その年、最もTRUNKらしさを体現したメンバーたちに与えられるMBP(Most Branding Person)も受賞しました。「一人のバーテンダーとしても、TRUNKの一員としても、まだまだ成長していきたい」と語る彼。TRUNKで描く「その夢の先」を語ってもらいました。
19歳で来日。
幼少からの憧れの国・日本。
TRUNK(LOUNGE)でバーテンダーとして働いているラム・ソム・ラジュです。仲間からは「ソム」と呼ばれています。
私の母国・ネパールでは、多くの人が日本、そして日本人に対して好感を持っています。それは、政府開発援助(ODA)などを通じて長年にわたって援助や支援を行ってくれたという事実と、そのことを私たち国民もよく理解し、感謝しているという社会的背景が大きく影響しています。両親も、私が幼い頃から「日本の人たちはとても優しいんだよ」と事あるたびに話してくれました。日本や日本人については良い話しか聞いたことがありません。ネパール人と日本人は顔立ちもよく似ていますし、親しみを感じます。私が日本に行くことが決まった時も、家族は自分のことのように喜んでくれました。
今や世界中で熱狂的な人気を誇るジャパンカルチャーですが、私も日本のマンガやアニメーション、ドキュメンタリーなどに触れて育ったので、日本文化への興味は自然と強くなっていきました。特に好きなのが「江戸時代」や「侍」。気が付けば「いつか自分も日本という国を体験したい」と考えるようになっていました。ただ、実際に日本に来てみたら想像していた世界とは全く違っていて、「えっ、侍いないの…?」と愕然としましたね(笑)。
念願が叶って留学が決まり、初めて日本に来たのが2013年10月末のことです。19歳の時でした。来日して1年ほどは日本語学校に通いながら、不動産業、コンビニエンスストア、レストランなど、さまざまなアルバイトを経験し、日本語を習得しながら、この国での生活にも少しずつ慣れていきました。その後、TRUNKに入社する前までは東京の専門学校で国際ビジネスを学んでいました。

離れて気が付いた、
自分のなかに深く刻まれたTRUNKの価値観。
2017年6月にTRUNKに入社し、最初はTRUNK(KITCHEN)のスタッフとして配属されました。TRUNKに入社した決め手は、日本のホスピタリティと現代的なライフスタイルを融合させたユニークなコンセプト、そして、ブランドサステナビリティであるソーシャライジングという考え方です。
周りの人たちに優しく接する両親を見て育ったため、私は社会貢献に関心があり、ボランティアなどにも積極的に取り組んできました。自分もいつか両親のような人間になりたいと思っていましたね。ソーシャライジングで謳われていることは私の考えにとても近く、強い共感を覚えました。とりわけ「環境」と「文化」は、私のなかで大きなテーマとなっています。会社全体として多様性や創造性を大切にしている点も魅力でした。外国籍のスタッフも多く、ダイナミックでインクルーシブな環境で自分自身が大きく成長する機会があると感じ、知れば知るほどTRUNKで働きたいという想いが強くなっていきました。
実は、私は一度、TRUNKを離れて別のホテルで働いたことがあります。外に出てみて良かったと思うのは、TRUNKが持つ魅力を再認識できたこと。マニュアルに沿って決められた仕事をこなすのではなく、目の前のゲストと向き合って自分の思う最高のサービスを提供するのがTRUNKのスタイルです。ルールを重んじる一般的なホテルではあまり見られない特徴ですよね。社会貢献意識もしっかりと根付いている点も、私の考えにぴったりです。TRUNKで働いていた時にはあまりに当たり前だったこの働き方が、自分の価値観として深く刻まれていることに気付いたのです。だから、TRUNKに戻ることに決めました。

ゲストとの温かい交流が、
バーテンダーという仕事の醍醐味。
TRUNKに戻った後、2023年2月にTRUNK(LOUNGE)に異動してバーテンダーとして働いています。ネパールにいた時にも仕事の一環としてリキュールの管理をしていましたし、TRUNK(KITCHEN)在籍時もバーの担当でした。バーテンダーは憧れの仕事であり、伸ばしていきたいスキルのひとつだったので、私にとっては夢が叶った瞬間でした。ドリンクの提供、オリジナルカクテルの作成、バーの在庫管理など業務は多岐に渡りますが、何より大切なのは「すべてのゲストに心地よい時間を過ごしていただけるようにおもてなしをする」こと。TRUNK(LOUNGE)だけの特別な体験を届けることが何よりも大切です。
バーテンダーの仕事の魅力は、何と言っても「ゲストの反応がダイレクトに感じられる」ことですね。ゲストにカクテルの感想をお聞きするのも、カウンター越しに遠くから反応を見るのも大好きです。「美味しい」という意味のハンドサインを送ってもらえたりしたら、本当に幸せな気持ちになります。私が大切にするのは「細部へのこだわり」「安定した品質」、そして「温かい接客」。いつでもゲストのニーズを先読みし、心地よい空間づくりを心がけています。
日本の方であっても外国の方であっても、ゲストの国籍を問わず円滑なコミュニケーションが取れるのは自分の強みですね。ありきたりなサービスを提供するのではなく、自分の感情も表現しながら、ゲストの希望に応えたいと考えています。文化や言語の違いから意思疎通に苦労することもありましたが、忍耐強く、どんな人にもオープンな気持ちで接することで困難を乗り越えてきました。すべての経験が私を成長させてくれていると実感しています。
オリジナルカクテルの開発も、バーテンダーの仕事の楽しい一面ですね。ソーシャライジングのコンセプトを一杯のカクテルに落とし込んでいくことを常に意識していいます。これまでに私が携わったメニューのなかでも、特に評判が良かったのが2023年の春の期間限定メニューとしてご提供したカクテル「ブロッサムクイーン」です。桜の季節に合わせてサクランボをメイン素材にし、そこにミントやレモンを加えたカクテルで、味もビジュアルも高いクオリティに仕上げることができました。ホテルで働く仲間たちからも評判が良く、「今日飲みに行くから取っておいて」なんて声もかけてもらって。シーズナルカクテルの成功例としていまだにスタッフの間で語られています。これからも、あのカクテルを超える、TRUNK(LOUNGE)の顔となるような魅力あふれる個性的なメニューを届けていきたいですね。

ほんの少しの行動からでも、
誰かの心を動かすことができると信じて。
私たちが届けるおもてなしは、日本の伝統と現代的な感覚を融合したもの。TRUNK(HOTEL)の魅力は、ラグジュアリーさとカジュアルさが高いレベルで均衡している点にあると思います。ここは単なるホテルではなく、「東京の今」をスタイリッシュかつ快適に体験できる場所。「ひとつのライフスタイルを提供している」という自信があります。入社前はいわゆる「普通のホテル」を想像していましたが、実際に内部を知って驚きました。TRUNKには創造的で柔軟な文化があり、特にチームの一体感、そしてスタッフ同士のサポーティブな姿勢は、ホテル業界はもちろん、あらゆる企業でも類を見ない水準にあるのではないでしょうか。
ソーシャライジングが掲げる「ENVIRONMENT(環境)」「LOCAL FIRST(ローカル優先主義)」「DIVERSITY(多様性)」「HEALTH(健康)」「CULTURE(文化)」の5つの要素のうち、私が意識しているのが「LOCAL FIRST(ローカル優先主義)」と「DIVERSITY(多様性)」です。TRUNK(LOUNGE)で働くときには、ゲストの国籍や文化的背景を意識しつつ、誰にでもわかりやすい言葉で丁寧に接客することを心がけています。また、地域の生産者が手がけたお酒や季節の素材を使ったカクテルをおすすめすることで、地域の魅力を伝えることにも積極的に取り組んでいます。
私自身もネパールから日本に来たというバックグラウンドを持つので、TRUNKが大切にする「自分らしさ」を失うことなく、他のスタッフやゲストとも自然体で関わるようにしています。「ほんの小さな行動からでも、誰かの心を動かすことができる」と信じ、日々の仕事と向き合っています。

外国籍スタッフが活躍できる環境が、
グローバルホテルブランドへとつながる。
TRUNKで働くメンバーは、自分が成し遂げたい夢や目標を「WANT」として掲げています。私が一番大切にしているWANTが「TRUNKが目指す2030年のVISION実現に貢献すること」です。
TRUNKが目指すのは「日本初のグローバルホテルブランド」です。グローバルブランドであると胸を張るには、多くの国からTRUNKを訪れてくれるゲストにきめ細やかに対応しなければなりません。そのためにも、外国籍スタッフいきいきと働ける環境が欠かせないと思っています。だから、言語の壁に遮られて、業界や社内の情報に思うようにアクセスできずに困っている仲間たちのために、彼ら、彼女らが安心して未来を語ることができる場を創りたいと考えました。私もネパール出身で日本で働く身なので、外国籍スタッフ特有の課題も理解することができます。これまでに私が直面してきた課題、そして、そのときに学んだ乗り越え方。それらを共有することは、同じ境遇にある仲間たちにも価値があると思ったのです。
私が取り組んだのはコミュニティづくりです。ホテルの将来や自分たちのキャリアについて自由に語り合える場として、私を含めた外国籍スタッフが参加できるLINEグループを立ち上げました。会社に関する重要な情報を日本語から英語に翻訳して外国籍スタッフに共有していたのが始まりで、「これはTRUNKにとっても仲間たちにとっても意味がある活動だな」と感じました。また、日本語能力が十分でないスタッフは、会社や仲間に対して自分の思っていることをうまく伝えることが難しいこともあります。そのサポートもできたらと考えていました。日本で働く外国籍スタッフにとっては就労ビザ取得も大きな課題ですが、その点でも経験者としてアドバイスすることができますからね。
自分一人では辿り着けなかった情報を手に入れられる「インプット」としての側面、そして、言語の壁を乗り越えて声を届ける「アウトプット」としての側面。その両方の機能を果たすコミュニティを通じて、それぞれが未来に向けて踏み出す後押しができたらいいですよね。最近ではオンラインだけでなく、リアルにもこのコミュニティを拡大しています。小規模なグループで集まって、TRUNKのフィロソフィーやCREDOについて語り合いながら、これからどんな行動を取っていこうかとオープンにディスカッションしています。最近では外国籍スタッフだけでなく、新たにTRUNKに加わった日本人スタッフも参加してくれています。ここは言語や文化を超えたコミュニティで、不安を感じることなく、どんなことでも話せる場所。このコミュニティは私にとっても大きな意味があるもので、これからも大切に育てていきたいですね。
このコミュニティの取り組みを評価していただき、2024年にはMBP(Most Branding Person:その年、最もTRUNKらしさを体現したメンバーたちに与えられる賞)を受賞しました。年に数人しか受賞できない特別な賞なので、大変名誉なことだと思っています。ただ、それ以上に重要なのは、「ホテルの未来や個人の成長につながることに真剣に取り組んでいれば、会社はその活動をしっかりと見てくれるし、相応の評価をしてくれる」というメッセージを仲間たちに広く伝えられたこと。このMBPは、共に取り組んだ仲間たちを代表して私がいただいたもの。人と社会に貢献したいという私の強い想いに共感してくれた方たちに深く感謝しています。

バーテンダーとしても、ホテルの一員としても、
まだまだ成長していきたい。
夢はたくさんあります。
一人のバーテンダーとしては、近い将来、カクテルコンペティションに出場したいですね。多くの人に驚きと感動を与えられるようなカクテルを創り出せたらと思っています。優秀なバーテンダーたちと競い、共に高め合う場に参加することで、技術、知識、発想力をさらに伸ばすことができるはずです。そしていつか、TRUNKでの経験を糧にして、ネパールと日本のスタイルを融合させた私だけのバーを開きたいですね。日本にもネパールにも自分のお店を持つことができたら最高ですね。
TRUNKの一員としては、ホテルのマネジメントを積極的に学び、数年後にはマネージャー職にも挑戦したいと考えています。外国籍スタッフのロールモデルとなれたらいいですね。私は自分自身を、学ぶことや成長することに情熱を持つ努力家だと思っています。マルチカルチュラルな視点を活かし、ゲストとの真のつながりを持つことは私の喜びです。いずれは日本に帰化したいという思いもありますので、日本語能力もさらに伸ばしたいし、まだまだ成長できると思っています。
TRUNKの一員であることを誇りに思い、「日本を代表するホテル業界のリーディングカンパニーとなり、 日本の観光価値を高める」という壮大なビジョンの実現に貢献していきたい。日々、ゲストと接するなかでもTRUNKのVISIONを熱量を持って伝えていくことで、次の未来につながっていくと信じています。
